そばの実の構造

そばの実(からの付いたままの状態)を「玄そば」と呼びます。 玄そばの構造や成分を理解する事によって、そのような性質や特色を持ったそば粉になるのか理解を深めるためにも是非知っていただきたいと思います。

そばの実(玄そば)は外側から中心部に向かって、殻(外皮)→種皮(甘皮)→胚乳→胚芽という構造になっています。そばの色に影響する灰分や、麺としてつながる力となるたんぱく質が多く含まれているのは、胚芽や種皮(甘皮)であり、炭水化物が主体の胚乳にはそれらの成分はほとんど含まれておりません。そばの実(玄そば)のどの部分をどの程度使うのかによってそば粉の風味や色も違ってきます。

そばの実(玄そば)から殻を取り除いたもの(丸抜き)を製粉すると、外側からではなくまず中心部のほうから砕けて粉になっていきます。最初に挽き出されるのは、胚乳の中心部が砕けて粉になったものです。これがでんぷん質が主体の色の白い粉で「一番粉」になります。

「一番粉」を取った次に、胚乳の残りや胚芽の部分が砕けて粉になります。蕎麦らしい色や香りがあり、たんぱく質も若干含まれます。これが「二番粉」となります。さらに「三番粉」になると種皮(甘皮)の一部も挽き出されますので色も香りも濃く栄養価も高くなります。しかし繊維質が多くなるので、食感に特徴が出てきて好き嫌いが分かれるようです。このような取り分けをしない粉を「挽きぐるみ」と呼んでいます。

在来種(ざいらいしゅ)と改良品種(かいりょうひんしゅ)

日本の蕎麦は、昭和20年ぐらいを境に、在来種から改良品種へと変わっていったらしいそうです。そうした改良の理由は、栽培のしやすさや収穫量のためです。それ以前は、日本各地にその土地ごとに育てられてきた在来種がありました。

在来種とは、固有の土地に長い間栽培されてきた品種のことです。改良品種は、農業試験所で改良され、特別な名前がついた品種のことです。在来種の多くは栽培地の名を頭につけて呼ばれるものですが、蕎麦は稲や麦などの多くの作物が「自家受粉作物」であるのに対し、昆虫の力を借りた「他家受粉作物」であるため、品種としての均一な特性を維持することが難しい部分があります。

そばの花の構造と性質

そばの花は実は2種類存在します。それは長柱花と短柱花の2種類です。
長柱花とはめしべが長くおしべが短い。逆に短柱花とはめしべが短くおしべが長い花をいいます。これは同一種の植物中でも、その株によって構造が異なる植物学上では異型植物といわれるものであります。

そばの場合ですと、長柱花と短柱花の比率はおよそ半々になります。よって、そば畑一面に広がるそばの花の半分は長柱花、残り半分は短柱花ということです。

花の構造の違いだけにとどまらず、結実するための受粉と大きな関係をもっています。通常の作物が1種で受粉を行って結実するのに対し、そばはこの2種を昆虫などによって受粉させる、「適法受粉」という方法でなければ結実できない仕組みになっています。

そばのような他家受粉は、その花粉の運搬を虫や風に頼ることになりますので、気候などによってその受粉率が大きく左右されます。さらに、結実するための受粉の組み合わせが限られるため、そばの受粉率はかなり悪いといえます。開花時に訪れる虫が少ない場合は、受粉しない、いわゆる「無駄花」が多くなり、収穫量に大きく影響します。

そばの栽培

そばは種をまいてから収穫までの期間が稲、麦などに比べ非常に短く、火山灰地や開墾地などの貧弱な土壌でも良く育つことから、飢饉に備えての栽培が奨励されてきました。

栽培時期には気温が深く関係してきます。まず、そば花粉の発芽適温は20℃以下が良いとされています。28℃を超えるとメシベの発育が悪くなり、不作の原因にもなるといわれております。

また、そばは霜に弱く、春まきでは発芽時期の晩霜に注意が必要であり、秋まきでは結実期の初霜に注意しなくてはなりません。以上の理由から、日照時間が長くなりはじめる初夏と、比較的温暖で冷涼な気候になる秋が栽培に適していると考えられております。

栽培期間は夏そばで70日~85日、秋そばで80日~90日くらいと多少の差異がありますが、これは種をまく時期によって開花までに要する日数の違いとされています。

夏(なつ)そばと秋(あき)そば

夏そばは、九州が4月上旬頃から北海道が6月下旬に種を撒き、九州では6月中句頃から、北海道でも8月中句には収穫が終わります。東京では暑い盛りに出まわることになりますが、地方によっては旧盆の振る舞いに間に合うようにと、日数を逆算して種をまいたものだともいわれております。夏そば、は日照時間が少ないためメシベが発育不全で、秋そばに比べますと色や香りがどうしても薄くなり、味も淡白なものになってしまいます。

秋そばは、北海道が7月上旬頃から九州が9月上旬に種を撒き、一番早く収穫されるのが北海道で9月中旬、九州では11月中句となります。夏そばに比べて、”秋そば”は味、色、香りともに優れています。一般的に「新そば」と呼ばれるのはこの収穫したばかりの秋そばのことをいいます。

石臼挽きとロール挽き

石臼挽き製粉によって製粉されたそば粉はなぜうまいのか?製粉方法によってどんな違いがあるのでしょうか?そば製粉の方法には、主に2種類あります。石臼挽きによる製粉と、ロール製粉(機械挽き)とがあります。ロール製粉とは細かい溝を切った2本の鋳鉄の筒を噛み合わせて回転させ、筒の間にそばの実(玄そば)を流し込み粉砕させながら粉にする製粉方法です。そば粉の仕上がりや質にこだわるのであれば、石臼挽き製粉の方に軍配が上がるといえます。そば粉は香りや風味がとりわけ大事だといえますが、製粉作業中でこれらの要素を損なわないようにする事が非常に重要であります。

ロール製粉と石臼挽き製粉ではどのような違いがあるのか・・・通常のロール製粉機の回転数は毎分数百回転で動きます。石臼挽きの場合は毎分15~25回転くらいが普通でしょう。あきらかにロール製粉の方が高速であり、そばの実(玄そば)に熱を与えていることがわかります。このことより、ロール製粉より石臼挽き製粉の方が、はるかに香りが飛びにくい(粉焼しにくい)製粉方法であることがわかります。

また、石臼挽き製粉は面と面によって挽きつぶしていきます。石臼で挽いた粉は、粒子が細かく仕上がるため食感も滑らかで打ちやすい粉に仕上がります。石臼挽き製粉は、昔ながらの手間隙かけた製粉方法でありますが、その手間をかけた分、香り高く粒子の細かい最高のそば粉に仕上がるということです。

そば粉の種類

抜きを軽く粗挽きしたときに割れて出る、胚乳の中心部を挽いてふるいにかけた粉が一番粉になります。内層粉ともいいます。これは色は白くでんぷん質が主体で少しホシはあり、そばらしい色や風味はありませんが、特有のほのかの甘味と香りがあります。しかし、たんぱく質が少ないため粘りが少なく、麺を打つにはつなぎが必要です。

一番粉をとったあと、さらに挽砕を続けて製粉されたのが二番粉になります。中層粉ともいう。香りや味に優れており一番粉より上とされている。そば粉の色は淡色緑黄色で、ソバの栄養素や香味成分に富んでいます。

三番粉は一・二番粉の挽砕を経た製粉で、二番粉と同じ香味や栄養素など多く含まれています。そば本体の香りは一番優れています。ただ、甘皮まで挽き込んでいるため繊維質が多く含まれているので、食感は一・二番粉に比べて劣ります。表層粉ともいう。

三番粉を挽いた残りがすえこ(末粉)になります。四番粉ともいいます。皮に近い部分で、外皮すれすれまで挽き込んだ黒く粗い粉で、たんぱく質と繊維質が多く含まれています。香りは一番高いが、舌ざわりはよくありません。さなごともいいます。

玄ソバの外皮(黒い殻)をつけたままで、全種子を丸ごと製粉したものを挽きぐるみといいます。石臼などで挽き、それをふるいにかけて殻を取り除く製粉の方法です。全層粉や全粒粉ともいいます。

そばの栄養素

そばは栄養のバランスがとれたスローフード 日本最古の医学書「医心方」に、「そばは、五臓の汚れたカスを洗い流して、精と神をつなぐ。その葉を煮て、野菜として食することもできる。」とあり、昔よりその効用が謳われているようです。そばの主成分は、他の穀類(米や小麦等)と同様にデンプンですが、 その他にもたんぱく質や各種ビタミン、ミネラルなどを豊富に含んでいます。

〇たんぱく質の含有量
たんぱく質は生命の維持や成長に欠かせない物ですが、そばは他の穀物類より多くのたんぱく質を含んでおります。精白米やうどんと比べてもかなり多く、他の穀物類の中では一番多く含まれております。そして、何よりたんぱく質を構成しているアミノ酸のバランスがよい。穀物類の場合はアミノ酸の中にあるリジンの含有量が少ないが、そばには多く含まれています。

〇ビタミンB1・B2で疲労回復
ビタミンB1は炭水化物をエネルギーにかえるために欠かせません。脳の働きを活発にするのにも役立っています。これらのビタミンが不足しますと、イライラや体力の低下や食欲不振の原因になります。ビタミンB2は多くの栄養素の代謝に関係しています。また体の成長、発育に重要なビタミンでもあります。皮膚や粘膜を正常に保ち、肌・爪・髪の発育や体全体の抵抗力を強める働きを持っています。

〇その他のビタミンもいっぱい
そばにはビタミンB1、B2以外にも、健康を維持していくために必要なビタミンがたくさん含まれています。ビタミンEは老化から守り、皮膚の強化、若返りに役立ちます。パントテン酸というビタミンは、ホルモンの合成に役立ち、疲労回復や炎症を和らげます。胃痛や頭痛、胃潰瘍、ガン、脳出血などの予防や免疫力の向上にも効果的。ナイアシンは血管の壁を強化し、過剰な飲酒による胃壁の荒れを防ぐ働きがあり、その他にも皮膚の活性化にも良いです。動脈硬化を防ぐリノール酸なども含まれています。そばほどビタミンが豊富な穀物類はありません。

〇酵素の役割
そばには体内での消化を促進させる酵素を多く含んでおり、たんぱく質や脂肪を分解して消化を助けてくれますが、この酵素が多く含まれていることにより、小麦粉などに比べ保存性が悪いことの原因となっています。そのため、そば粉は保存状態や保存温度に非常に注意しなくてはならなく、挽きたてのそば粉はなるだけ早めに使われるのをお薦めします。

そばは体を守ってくれる

〇生活習慣病を防ぐ
そばが高血圧に良いということは、昔からいわれてきておりますが、これはそばに含まれているルチンの働きにあります。ルチン(ポリフェノールの一種)には、毛細血管の強化と保護や血流の改善のほかにも、糖尿病・動脈硬化・脳梗塞などの生活習慣病の予防に効果を表します。ただし、ルチンは水溶性のため、そばを茹でると茹で汁の中に流れ出てしまいます。そのため、お蕎麦を食した後にそば湯をいただくのが最適といえます。

〇肝臓を守る
そばは、酒飲みの害を少なくする食物として昔から知られておりますが、その理由はそばに含まれるコリンにあるといわれています。コリンには肝臓を保護し、お酒を飲む際に肝臓に脂肪がたまるのを防ぐ働きがあるので、脂肪肝・肝硬変の予防に効果を発揮します。昔の人が、お酒を飲んだ後にそばを食べていたのも、実に理にかなったことといえます。これを知ると粋なお蕎麦屋さんで美味しいお蕎麦とお酒をいただきたくなってしまいますね。また、コリンには尿中に食塩の排出を促進する働きも持っており、高血圧の予防にも効果があります。
その他にも自立神経失調症の予防に効果的なアセチールコリンを作る原料となります。

〇豊富な食物繊維
そばには4~7%の食物繊維が含まれていており、これは小麦粉の約2倍、白米の8倍以上と、他の穀物類の中でも最も多く含まれています。よく知られますように、食物繊維は便秘の予防や解消に効果があります。このことからダイエットや美肌にも良いといえます。

そばの活用法

健康の知恵(そばの活用法) 昔は、毎日の食べ物で体の具合を整え、痛みや腫れなどを治し、健康を維持してきたものであります。多少からだの調子をくずしたり、具合が悪くなってもすぐに病院に行ったり、すぐ薬を飲むようなことはありませんでした。しかも、即効性のあるものを、治るまで飲み続けることも無かったのではないでしょうか?「医食同源」あるいは「薬食同源」という言葉があります。医や薬に勝るのは身近な食であることを教えた言葉であります。そのことは、そばにおいても同様のことが言えます。症状例によるそばの活用法を一部抜粋したいと思います。

便秘
そば粉を水で溶いて毎日常食すると、便秘に効果的です。胃腸の汚れをとる 腸にたまった老廃物を除去する働きがありますので、週に何度かそばを食べるのが良いでしょう。

腹痛
そば粉を熱湯でよく練り、そばがきにして食べる。刻みねぎやおろししょうがなどの薬味を加えると良いでしょう。

腰痛
そば粉を酒で溶いて患部に貼る。乾いたら貼り替えます。